情報と知識

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情報


情報が文明に与える影響は、いうまでもなく、紙ベースの情報伝達から、電話、インターネット、携帯となるにしたがって、個人間の情報流通が増え、自由度が増したことに関係する。その結果、新たな情報の集積地が増え、社会構造および権力構造が変化している。

歴史的には工業化により資本主義が確立し、民主主義的な国民国家が成立した。国家の権力は二○世紀に最強となった。工業化による経済厚生の向上とあいまった民主主義政体への支持、武力を支えた科学技術の動員、さらにマスメディアに流す情報を操作することなどによって、国家の権力は支えられた。しかしいまや、情報流通の個人化によって、国家・政府、マスメディアは、その力の源泉を失いつつあるとみることもできる。あとで挙げる事例をみれば、情報が特定の個人または企業、集団により集積されるなどにより、国家の政治的絶対優位は失墜しつつある。権力の分散化は必然であると考えられる。

他方、知識は従来、政府の決定、市場による価格形成、学問などにより生産されてきた。一部の知識人の営みとして知識は生産された。市場においては知識は神のみえざる手が形成した。

しかしながら、情報流通によって権力が分散されると、知識を形成する仕方が異なってくる。20世紀に強力であった国家というものから、21世紀には市民へと社会の主役が変化する。大構造転換が起きるわけである。



知識


知識は、それをもつ主体、つまり個人や組織を前提としている。その主体が置かれた状況、これを文脈と呼ぶとすれば、知識はその主体の文脈の下で形成される。主体は、個人やグループ、企業、NPO、政府など多様でありうる。主体となる組織の形成の仕方は、従来より多様になった。個人の情報発信力は増している。文脈は、主体の経験、状況等によって異なる。したがって、主体の形成の仕方と文脈が変わることによって、何を知識とするかは異なる。前述の権力分散化によって、新たな知識生産主体が形成可能となった。主体がおかれた文脈によって知識のあり方は変わるのだから、権力の分散化によって、分散された主体が、都合の良いように相関への適応、主体の行動の統制をし、知識生産を分散化する。これによって異なる文脈下の知識生産の機会が増大する。このことは、知識の多元化に通じる。知識の多元化は、その質の向上の可能性を秘める一方、質の劣化を引き起こすおそれもあるし、また、知識の対立や不整合といった問題を起こす可能性がある。また、知識の多元化は、適切な組み合わせをすることによって、より多くの、高次の知識を生産する可能性をもつ。
したがって、知識の主体形成を工夫するとともに、知識の適切な組み合わせによる高次の知識生産の仕方を探る必要があるといえる。



フレンド・ショアリング

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米国バイデン政権は、「フレンド・ショアリング(friend-shoring)」というコンセプトをが提唱している。フレンド・ショアリングは「信頼できる貿易パートナーとの経済統合を深めること」で、同盟関係や友好関係にある国地域内でのサプライチェーンを構築するとともに、さらに多様化し、経済的リスクの軽減も進めることを含めて考える。

フレンド・ショアリングは米中間の覇権競争の顕在化と深刻化の中で、2016年頃から米国の経済安全保障の一環として構築を急いだサプライチェーンの重要なコンセプトである。

直接的には、米中覇権競争、世界的なコロナパンデミックやウクライナ戦争等による対応として出現した考え方とみることができるが、行き過ぎたグローバル経済の適正化もしくはパラダイムシフトとして捉えることもできる。

●2021年「繁栄のためのインド太平洋経済枠組み(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework for Prosperity、以下IPEF)」(東アジアサミットでバイデン大統領によって提唱)
●2022年「貿易・技術協議会(TTC:Trade and Technology Council)」の設立。米国とEUの間での経済安全保障の確保を目的。

フレンド・ショアリングは、経済安全保障は保護主義によってのみ実現可能という主張への反論でもある。国内生産や少数の国との取引にだけ限定してしまえば、貿易の効率向上を著しく損ない、アメリカの競争力とイノベーションに打撃を与えるだろう。私たちの目標はリスクのある国との取引やサプライチェーンの集中から脱却し多様化を図ることだ。フレンド・ショアリングは閉鎖的ではなく、先進国に加え新興市場や途上国におけるアメリカの貿易パートナーも含めたオープンなものになる。



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